前回の記事(インフルエンサーのPR投稿はGoogleマップではポリシー違反|店舗が負うリスクを解説)で「消費者庁にも情報提供する予定です」と書いたままになっていましたが、本日、消費者庁の情報提供フォームから提出をしてみました。
消費者庁には、ステマ(広告であることを隠した宣伝)専用の情報提供フォームというのがありますが、私を含め使ったことがある人はたぶんそんなに多くないと思います。私も今回が初めての体験でしたので、せっかくならばどのような内容を記載するのかをご紹介したいと思います。
情報提供フォームは3種類ある
入口は消費者庁の「景品表示法に関する情報提供」のページです。ここに情報提供のフォームが3つ並んでいて、何について知らせたいかで使い分けます。
- 景品表示法違反被疑情報提供フォーム:ステマ以外の景品表示法違反の疑い全般(実際より良く見せる誇大な広告や、行き過ぎた景品など)
- ステルスマーケティングに関する景品表示法違反被疑情報提供フォーム:広告なのに広告だと分からない表示、いわゆるステマ
- 携帯電話に関する景品表示法違反被疑情報提供フォーム:携帯電話の端末料金やデータ通信などに関する表示
今回は、PR表記のないインフルエンサーのクチコミなので、2つ目のステマ専用フォームからの報告になるようです。
(出典:景品表示法に関する情報提供|消費者庁)
開くと注意事項が出てきて、「上記について同意しました」を選ぶと先に進めますが、読んでおいたほうがいいのはこのへんでしょうか。
- 個別のトラブルの仲裁やあっせん、景品表示法の相談には対応しない
- 提供した情報について、調査の経過や結果は教えてもらえない
- 提供者の情報は外部に出ない
同意すると画像認証の画面が表示されます。

入力画面の中身
情報提供フォームの入力画面は大きく4つのブロックに分かれています。
ステマの疑いがある事業者

必須なのは「会社名又は名称」だけで、ふりがな、住所、電話番号、ホームページは任意です。
事業者の欄に書くのは、広告主である店舗です。前回の記事でも書いたとおり、ステマ規制で責任を問われるのはステマを依頼した店舗なので、このフォームは店舗について情報提供する作りになっています。
事業者を書く欄は1社分しかないので、複数店舗報告する場合は、数回に分けて送る必要があります。
仲介した会社は、誰が取り締まるのか
今回の件で言えば、PR表記を外したクチコミを集客の手段として売り込み、店舗をステマに加担させているのは集客支援会社のほうです。店舗だけを報告しても、同じ手口が別の店舗で繰り返されるだけなので、本来はこうした事業者そのものを報告できる窓口があったほうが良いと思います。今回は、集客支援会社のことは「事業者の表示(広告)だと考える根拠」の欄に詳しく書いたうえで、Googleにもサードパーティのポリシー違反として別途報告しています。
ただ、Googleに報告しても、Googleが打てる手はGoogleというプラットフォーム上におけるペナルティーに留まります。店舗型に対してはビジネスプロフィールの停止、クチコミの投稿制限、プロフィール上に表示される消費者向けの警告(アラート)といった形でペナルティーが課される可能性あります。
ただし、当然ながら間に入った会社に対してGoogle側から罰金を科したり、社名を公表したりすることはできません。私自身、Googleのサードパーティのポリシー違反企業の報告を長年続けてきていますが、報告を行ったMEOツールの会社が、目に見える形で不利益を受けた例は見当たらないように思います。(なお、サードパーティのポリシーの適用が甘いこと自体は、私を含めた複数のプロダクトエキスパートがGoogleに対して問題だと指摘しています。)
ちなみにアメリカでは、こうした会社を行政が直接取り締まった例があります。
- 2013年、ニューヨーク州の司法当局(州の検事総長にあたる司法長官の事務所)が1年がかりのおとり調査を行い、偽のクチコミを書いていた19社を虚偽広告にあたるとして摘発しました。19社には、自分の店の偽のクチコミを書いていた事業者だけでなく、クチコミを代筆していたSEO会社やマーケティング会社も含まれています。各社は偽のクチコミをやめることを約束し、1社あたり2,500ドル(日本円で約39万円)から10万ドル(約1,570万円)弱、合計で35万ドル(約5,500万円)を超える罰金を支払いました。(出典:ニューヨーク州司法長官の発表(2013年9月23日)、CBS New York)
- 2022年には、FTC(連邦取引委員会)と6つの州が、部屋探しサービスのRoomsterを偽クチコミで訴えました。このとき、Roomsterに数万件の偽のクチコミを売っていたとされる業者に対しても別に手続きを取り、偽のクチコミの販売をやめることと、10万ドル(日本円で約1,570万円)の支払いを求めました。(出典:FTCの発表(2022年8月30日))
- 2024年10月には、虚偽のクチコミを禁じるFTCの規則が施行されました。虚偽のクチコミを書くことだけでなく、作って売ることも禁止の対象です。それまでFTCは、初めて摘発した会社に対しては、原則として「やめなさい」と命じることしかできず、罰金を求められるのはその命令を破った2回目以降でした。この規則によって、クチコミが偽物だと知っていた会社や、普通なら気づけたはずの会社には、1回目の違反から罰金を求められるようになりました。上限は違反1件あたり5万1,744ドル(約810万円、2024年時点の額)です。(出典:FTCの発表(2024年8月14日)、Davis Wright Tremaine(米国法律事務所)の解説)
※日本円は1ドル=157円(2026年10月時点)で換算しています。
日本では、ステマ規制で措置命令を受けて社名を公表されるのは、広告主である店舗です。法律違反をした店舗の責任は、もちろん問うべきです。しかし、法律違反を助長する手口をサービスとして売っている会社が、罰を受けずに野放しのままでは、違反はなくなりません。刑法に、犯罪に手を貸した者を罰する「幇助罪」があるように、ステマ規制にも、違反の手口を売る側の責任を問う仕組みがあってしかるべきです。こうした会社にも罰金や社名の公表が及ぶよう、行政が取り締まる仕組みが整うことを期待しています。
報告者(自分)について

さて、入力項目に戻りますが、続いて氏名、属性、連絡の可否、住所、メールアドレス、電話番号の欄です。見た限り、このブロックには必須の印が付いていません。
属性は「回答しない」「消費者」「競争事業者」「取引先」「アフィリエイター・インフルエンサー・ECサイトのレビュー投稿者等」「その他」から選びます。連絡の可否については、追加での情報提供を求められた時に連絡ができるほうが良いと判断して、連絡は「可」としました。
他の行政機関等への情報提供の可否

「すべて可」「匿名なら可」「不可」の3択です。
ステマにあたる行為の中身

ここがメインの入力欄ですが、必須の項目は6つあります。
- 表示媒体
- 表示時期
- 対象となる商品又はサービス
- その表示内容
- 事業者の表示(広告)だと考える根拠
- 事業者の表示(広告)であることが分かりづらい理由
ほかに、URL、事業者からの依頼内容、裏付ける根拠の内容、という任意の項目もあります。

「事業者の表示(広告)だと考える根拠」と「事業者の表示(広告)であることが分かりづらい理由」には、それぞれ記入例が5つずつ付いています。前者は事業者が表示に関わっているといえるか、後者は見た人が広告だと気づけるかを書く欄です。
この2つの欄は、ステマ告示(2023年10月1日施行の「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」)が定める要件にそのまま対応しているようですが、ステマにあたるのは、次の2つを両方満たす表示になります。
- 事業者の表示であること:広告主が投稿の内容の決定に関わっていること。広告主が自分で書いた場合だけでなく、インフルエンサーなどの第三者に書かせた場合も含まれます。商品を無償で渡しただけでは足りず、やり取りの中身や対価の有無などから判断されます。
- 一般消費者が事業者の表示だと見分けにくいこと:「広告」「PR」「プロモーション」などの表記がなく、見た人が広告だと気づけないこと。
つまり、前者の欄では「店舗が投稿に関わっている」ことを、後者の欄では「それなのに広告だと分からない」ことを示すことになります。
(出典:「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準|消費者庁)
今回の記入時に気をつけたこと
「事業者の表示(広告)だと考える根拠」には「見れば分かる事実」を記載
今回の事例は、同じ投稿者が同じ店舗について、Instagramでは「#PR」や「タイアップ投稿」と付けているのに、Googleマップのクチコミでは同じ文章からPRの表記だけを消している、というものです。
「事業者の表示(広告)だと考える根拠」の欄には、推測は入れず、公開ページを見れば誰でも確かめられることだけを並べました。
- InstagramのPR投稿の日付と、そこに付いている表記
- Googleマップのクチコミと、Instagramの投稿で本文が一致している部分(実際の文を引用)
- 集客支援会社のサイトで、その店舗が導入企業や事例として紹介されていること
- 同じ会社のインフルエンサー紹介ページに、その投稿者がGoogleマップの投稿者ページへのリンク付きで載っていること
依頼のメールや契約書のような、依頼そのものが分かる資料は、当然ながら手元にありません。なので「事業者からの依頼内容」の欄は、公開情報から分かる範囲です、と最初に断ってから記載しています。対価も、金額までは分からないため、その旨を記載しています。
「事業者の表示(広告)であることが分かりづらい理由」はGoogleマップならではの話を記載
こちらは、書き始めてみると意外と書くことがありました。「PR表記がありません」だけだと一行で終わってしまうので、Googleマップのクチコミだからこそ広告だと気づけない、というところを具体的に書いています。
たとえば、GoogleマップのクチコミにはInstagramの「タイアップ投稿」のような表示の仕組みがありませんし、このクチコミに付けられた★5は、店名の横に表示される「★4.2」のようなクチコミスコアの算出にも影響しています。
さらに、投稿者が「ローカルガイド レベル9」のような高レベルのローカルガイドだと、Googleマップで精力的に活動しており、情報に一定の信頼が置けそうなユーザーに見えてしまいます。
あわせて、Googleのポリシーはインセンティブ付きのクチコミ(見返りを渡して書いてもらうクチコミ)を禁止していることも書き添えました。当然ながらGoogleマップの利用者は、他のGoogleマップユーザーのクチコミを「店舗からインセンティブを受けて書いたものではない」という前提で読んでいます。その前提があるからこそ、PR表記のないクチコミは広告(ステマ)だと気づけない構図になります。
(出典:禁止または制限されているコンテンツ – マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー)
添付ファイルの注意書き

添付ファイルは、pdf、jpg、png、zipなどを選択可能で、1ファイル50MBまで、合計100MBまで。ファイル名にスペースや括弧などの記号があると受信できないことがあるそうなので、スクリーンショットは英数字のファイル名にして、zipで1つにまとめて添付しています。
送信したあとの流れ
確認画面で中身を見直して送信すると完了画面になりますが、受付番号みたいなものは出ませんでした。Googleのサードパーティのポリシー違反の報告では、送信するとケースIDが発行されますが、消費者庁のフォームにはそうしたものがありません。控えを残しておきたいなら、送信前に確認画面のスクリーンショットを撮っておくのがいいと思います。
冒頭に紹介した注意事項にあったとおり、消費者庁が調査を実施するかどうかも、結果も知らされませんので、この先これ以上の追跡はできません。ただ、措置命令が出た場合は消費者庁のサイトで事業者名とあわせて公表されますので、継続して見ていこうかと思っています。
まとめ
- 消費者庁にはステマ専用の情報提供フォームがあり、誰でも利用が可能。
- 事業者の欄に書くのは広告主(今回なら店舗)。欄は1社分のため、複数の店舗は1件ずつ送信。
- 店舗をステマに加担させている集客支援会社は、このフォームの報告対象にならず、Googleへの報告でも罰則は及ばない。
今回、ステマ情報提供フォームを初めて使いましたが、画面はとっつきにくいものの、記入例を読むだけでもステマ規制の考え方が理解できるので、店舗運営事業者の方も一度のぞいて見ることをオススメします。
ただ、責任を問われるのが店舗だけで、ステマの手口を売る会社がそのまま残る今の仕組みでは、同じことが繰り返されてしまいます。こうした会社にも罰金や社名の公表が及ぶよう、行政による取り締まりが課題だと思います。
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