Googleは2025年4月7日に「New ways AI helps keep business information trustworthy」と題した記事をGoogleマップのプロダクトアップデートとして発表しました。(※英語記事です。)その中にはGeminiをGoogleが活用することで詐欺業者を検出したり、虚偽の★5(五つ星)のクチコミを購入することでクチコミスコアを不正操作しようとしているビジネスに対しての対抗策などが詳しく記載されています。興味深い内容なので解説してみたいと思います。

Googleマップ上の情報の信頼性を保つことの重要性
私達の普段の生活を考えると、ローカル情報を検索しない日はおそらくないでしょうし、Googleマップに掲載されているビジネス情報(名前、住所、電話番号、営業時間)、ビジネスの詳細情報(決済方法、駐車場情報)、写真、クチコミなどを参考にすることで、どのお店に来店するかを決めたり、消費行動を行う際の参考にしています。
こうした行動はGoogleマップに掲載されている情報が「ある程度正しい」ことを前提としていますので、Googleマップに掲載されている情報には一定の信頼性の担保が必要になってきます。GoogleはGoogleマップに掲載される情報について、独自のアルゴリズム、AI、専門的な訓練を受けたアナリストによる監視などで、情報が最新で信頼が出来るようになるよう努めているとのことですが、今回Googleが公開した記事「New ways AI helps keep business information trustworthy」には、GoogleがAIを活用することで、ビジネス情報の信頼性を保つための取り組みが解説されています。
Geminiの力を借りて詐欺業者を検出
Googleによると、2024年には10,000を超えるリスティング(ビジネスプロフィール)の削除に成功しているということで、これは実在する鍵業者(ロックスミス)を装って、オーナー未確認のビジネスプロフィールを乗っ取り、善良な顧客に不要な料金を請求していた悪質な業者によって管理されていたものだということです。
なお、Googleは詐欺的なコンテンツの削除だけに留まらず、これらの悪質業者に対して訴訟を起こし、この件から学習した内容を不正検知システムの強化に活かしているようです。
※余談となりますが、英語圏では特にこの鍵業者(ロックスミス)関連のビジネスプロフィールの不正操作が非常に多く、鍵業者(ロックスミス)の新規のオーナー確認が非常に困難である、停止された鍵業者(ロックスミス)の停止からの復活が非常に難航する状態が続いています。
「New ways AI helps keep business information trustworthy」内のGeminiの力を借りて詐欺業者を検出と書かれているパートに、新しい機会学習モデルが疑わしいプロフィールの編集を検知出来るように訓練を行っているという気になる記述がありました。具体例として「Zoe’s Coffee House」から「Zoe’s Cafe」への名前の変更は不自然ではないが、「カフェ」から「配管工(plumber)」へのカテゴリ変更は、明らかに不審と判断されると説明されています。
カテゴリー変更をトリガーとして不審と判断される挙動ですが、おそらく行き着く先は「オーナー確認が再度必要」になる挙動です。Googleが示している具体例は明らかに不審と言えるものですが、アルゴリズムの閾値の設定次第では、今まで設定してあったカテゴリーと関連するカテゴリー、公式サイト上で取り扱いありと記載があるカテゴリーへ変更したとて、オーナー確認が再度必要になる可能性はあり得るでしょう。
こうした挙動の危険性については別記事(ビジネスプロフィールのカテゴリー変更で「オーナー確認が再度必要」になる問題の注意喚起)で解説していますが、今回Googleが公開した記事を読んで「原因はこれか。。」と妙に納得しました。なお、Googleによると、この新しい機械学習モデルは今年(2025年)に入って、すでに数千件の不審なビジネスプロフィールの編集をブロックしているようです。
不正によって獲得した★5(五つ星)のクチコミとの戦い
そもそも論として、★5(五つ星)のクチコミを購入したり、不正に収集することで、ビジネスプロフィールのクチコミスコアを不正操作することはGoogleのポリシーで厳しく禁止されています。
Googleは「New ways AI helps keep business information trustworthy」の中で、AIが上記のような不審な行動の検出を効果的にサポートしてくれるとしています。なお、検出の仕組みとして、投稿から数ヶ月経過したクチコミに対しても再評価を行い、不正パターンを検出出来るようになっているということです。
ビジネスプロフィールのコミュニティー上では何度か話題に登ったことがありますが、こうした不正を受けてGoogleがビジネスプロフィールからクチコミを削除した場合に、その旨を通知するアラートが、アメリカ、イギリス、インドにおいて導入されているようです。

この機能は2025年5月から世界的に順次展開予定で、特定のビジネスが不公平なクチコミ操作を行っている可能性を、ユーザーが素早く察知出来るようになるようです。
なお、このアラートは日本語ヘルプでは消費者アラートとして紹介されており、具体的に可能性がある挙動としては下記3パターンが紹介されています。ただし、この3パターンが独立して1つ適用されるのか、同時に適用されるのかは明記されていません。
バナー: 不審なクチコミが削除されたことを知らせるバナーがビジネスのページに表示されます。
クチコミ投稿の制限: 一定期間、その場所に関するクチコミや評価を投稿できなくなります。
クチコミの非表示: 一定期間、そのビジネスへのクチコミが非表示になります。
アルゴリズムによる情報の信頼性の担保には反動がある
Googleが紹介している機械学習アルゴリズムやAIによる不正パターンの検出、ビジネス情報の信頼性を保つ取り組みですが、多くのユーザーがGoogleマップを利用(※世界中でMAUは20億人を突破)する中で、その情報の信頼性が保たれていることは非常に重要な要素です。
Googleは2024年に関して、ポリシー違反によるブロックまたは削除を複数実施しているとしており、その内訳は下記の通りです。
- ポリシー違反に該当するレビューを2億4,000万件以上ブロックまたは削除
- Google マップ上の場所に対するポリシー違反の編集を7,000万件以上ブロックまたは削除
- 偽のビジネスプロフィールも1,200万件以上削除またはブロック
- ポリシーに繰り返し違反した90万件以上のアカウントに対し、投稿制限を適用
数だけを見ると非常に多くの不正行為をブロックまたは削除しているものの、場合によっては関連カテゴリの追加でオーナー権限の再確認が必要になるなど、アルゴリズムの閾値設定によっては誤認も一定数あると考えられます。
2025年2月に発生した「ビジネスプロフィールのクチコミ総数表示が減少する問題」も、こうしたアルゴリズムの変更が原因であった可能性が高く、今回Googleが解説している情報の信頼性を担保する仕組みにおいても、少なからず誤認が生じていると見るべきでしょう。
あくまでGoogleビジネスプロフィールの利用者である我々ユーザーとしては、こうしたアルゴリズムの変化は常に起こり得ることを認識し、問題が発生した際には状況を正しく理解した上で、落ち着いてGoogleへのフィードバックやヘルプコミュニティの活用などで対応していく姿勢が求められます。