イタリア政府は2025年1月に、ホテル、レストラン、観光施設に対する虚偽、有償のオンラインレビュー(クチコミ)の投稿を規制する法案を発表しました。この法案について日本のニュースサイトでも紹介されていましたので、気になって調べてみました。なお、この法案は議会の承認が必要であり、2025年2月19日現在はまだ可決されていないようです。議会での審議を経て、法案の内容が修正される可能性もあります。

イタリアの虚偽のオンラインレビュー規制法案とは?

この法案はオンラインレビュー(クチコミ)をホテル、レストラン、観光施設にユーザーが投稿する際、ユーザー側に「本人確認が必要な身分証明書」「宿泊証明書などお店を利用した証明」の提出を義務づけようとするものです。オンラインレビュー(クチコミ)は「詳細かつ関連性のあるもの」である必要があり、さらに訪問後2週間以内に投稿する必要があります。有償レビューは禁止され、2年以上前のオンラインレビュー(クチコミ)で、「関連性がない」ものに関してはお店が削除を要求出来るようになります。

虚偽のオンラインレビューを規制する方法は不透明

海外のニュースサイトを複数閲覧してみましたが「本人確認が必要な身分証明書」「宿泊証明書などお店を利用した証明」を誰が確認するのか?は確認出来ませんでした。ただし、オンラインレビュー(クチコミ)の監視、違反者への罰則については、イタリアの公正取引委員会が担当することを提案しているようですので、「本人確認が必要な身分証明書」「宿泊証明書などお店を利用した証明」の確認についても公正取引委員会が担当するのかもしれません。

観光大臣、消費者保護団体は法案を歓迎

イタリアのダニエラ・サンタンケ 観光大臣は今回の法案に関して歓迎の声を寄せており、イタリアの消費者保護団体ASSOUTENTIも法案を歓迎しつつ、ソーシャルメディアに関しても適用されるべきとの見解を示しています。

ダニエラ・サンタンケ 観光大臣

「本日は、私たちのビジネスを保護するための重要な一歩となる日です。今回の規制により、実際に信頼できるレビューが提供されるようになり、これは、企業の成功、そして消費者や観光客の信頼にとって極めて重要なものです。」

消費者保護団体ASSOUTENTI

「この法案は公式なレビューサイトだけでなく、ソーシャルメディアにも適用されるべきで、ソーシャルネットワークの領域をより効果的に規制する必要があります。現在、無数のインフルエンサーやマイクロインフルエンサーが毎日レストラン、クラブ、スパ、宿泊施設をレビューしていますが、その多くは一見すると個人的で利害関係のない意見に見えます。しかし、実際には商業契約やギフト提供の結果であり、それが常に明確に伝えられているわけではないのです。」

セキュリティー、プライバシーリスクの懸念も

この法案はオンラインレビュー(クチコミ)の監視、違反者への罰則については、イタリアの公正取引委員会が担当することを案としているようですが、審議判定の正確性が担保されるかは不透明ですし、オンラインレビュー(クチコミ)投稿時に提出する「本人確認が必要な身分証明書」「宿泊証明書などお店を利用した証明」の管理責任がどこに所属するかも不透明です。

こうした個人情報をイタリアの公正取引委員会が管理することになるのか、Googleマップやトリップアドバイザーなどのオンラインレビューサイト側にこうした責任を求めるのかも含めて不明ですが、個人情報流出、データの不正利用のリスクが付きまといます。

レビューの匿名性が失われ、クチコミが激減する可能性

この法案ではオンラインレビュー(クチコミ)を行う際に、個人情報を提出する形になりますので、誰がこのオンラインレビュー(クチコミ)を投稿したのかがわかるようになります。最終的に掲載されるオンラインレビューサイト側には個人情報は載らないでしょうが(※個人情報の投稿がガイドラインで禁止されているプラットフォームが一般的)、オンラインレビュー(クチコミ)の審議判定を担当するであろうイタリアの公正取引委員会は確実に個人情報を把握出来るはずです。

ホテル、レストラン、観光施設側がこうした個人情報(※誰がこのオンラインレビュー(クチコミ)を投稿したのか?)を把握出来るようになるかどうかは不透明ですが、ユーザー心理として、「個人情報を特定されてしまうのであればクチコミは投稿しない」という判断をするのが自然です。

インターネット上のコンテンツの多くは、匿名性が担保されているからこそ、ユーザーの手によって増加するという構図を取ることが多いと理解していますが、インターネットユーザーに向けて、オンラインレビュー(クチコミ)投稿のために個人情報の提出を要求するという構図は、インターネット自体の理念(自由、オープン、匿名性、フェアである など)に反しているとも言えます。

この法案の方向性に注目

今回はイタリアの「虚偽のオンラインレビュー規制法案」とも言える法案について触れましたが、インターネット自体の理念と相反する法案であること、そしてGoogleマップ、トリップアドバイザーなどのオンラインレビューサイトでのオンラインレビュー(クチコミ)投稿に個人情報の提出を求める法案であるということで、今後どのような審議がなされ、法律として施行されるのかを含め注目したいと思います。

投稿者 moto-local

株式会社mov所属/観光庁DMO外部専門人材(Google Maps活用での誘客、周遊促進サポート)/Googleビジネスプロフィール ゴールドプロダクトエキスパート/観光地である伊豆出身なこともあり、観光地の消費額増大、地域活性化に貢献したいと思っています。/Googleビジネスプロフィール ヘルプコミュニティ(https://support.google.com/business/community?hl=ja)にてボランティアで回答中。