海外のメディアサイトでNear Mediaというサイトがあります。NearMediaは、ローカル検索、デジタルマーケティング、ローカルSEO、そして消費者行動に関するニュース、分析、インサイトを提供しており、GoogleのプロダクトエキスパートでもあるMike Blumenthal、元UberallのGreg Sterling両氏の豊富な経験に基づく考察は実に読み応えがあります。
このサイトは私自身が好きでよく記事を読んだり、Youtubeを見たりしているのですが、直近の動画で元Googleビジネス プロフィールのサポート部門のオペレーションディレクターであったBrad Wetherall氏が登場しました。Youtube上では2つの動画に分けて紹介されていますが、同じ内容がウェブ上で記事にもなっていますので、既に確認された方もいると思います。
大まかに1つ目の内容としてはGBPサポートの内情(GBPサポートの進化、サポートで多い問題点と停止アルゴリズム、動画によるオーナー確認、信頼スコア)となっており、
2つ目の内容は、クチコミに関して(虚偽のクチコミへの対策、クチコミへの返信とランキングへの影響、クチコミへのフィルタリングとビジネスカテゴリー、クチコミ関するその他の重要な点、GBPサポートの文化と品質、AIによる概要とGoogleが何を評価するか)といった内容でした。
非常に興味深い内容で、かつ元Google社員の方の口から語られる内容ということで、私も興味津津で動画を拝見しました。(※動画はある程度正確な英語字幕がついています。語られる内容自体が難解なので、昔アメリカに住んでいたとは言え、字幕がないとしっかり理解するのは難しかったです。)すべてを知りたい方は動画なりNearMediaの記事を読んでいただくとして、ポイントになりそうな部分を自分向けのメモの意味も含めて簡単に解説します。
動画で語られた内容全般について
語られている内容についてはあくまでもBrad Wetherall氏が在籍していた当時の情報である点をご注意ください。また、内部的にそうなっているとしてもGoogleが公式にドキュメント上で語っていない限り、今回の情報を情報ソースとして利用するのはリスクがあることを認識しておいてください。
特に2つ目の動画内で「クチコミに返信することはランキングに影響があるのか?」という質問に対してBrad Wetherall氏は「Yes」と即答していますが、ここだけを切り取って理解すると「クチコミに返信するとランキングが向上する」となりますが、前後の文脈、動画内でのやり取りを聞いていくと、「クチコミに返信をすることでユーザーエンゲージメントが高まり、これが間接的にランキングに影響すると言える」という意味だとわかります。
今回紹介する2つの動画の中で語られる内容は、前後の文脈、話の流れを理解しないままに切り取ると、Brad Wetherall氏が語った意図と異なる内容になる可能性もありますので、今回の記事で興味を持たれた方は、是非、動画を視聴して理解を深めてください。
英語ではイマイチわからんという方は、英語を勉強してください。英語をオリジナル言語として語られている内容を何らかのソース、情報源として利用される場合、正確な内容を理解をした上で引用するのは利用者自身の責任です。
Brad Wetherall氏について
Brad Wetherall氏はGoogleで10年間、GBPのサポート部門のオペレーションディレクターを務めた人物で、それ以前はGoogleペイメント、マップなどにも関わっており、その後Googleマイビジネス〜GBPのサポート部門で10年間を直近過ごして退社、現在は自身のコンサルティング会社「Bitwize Consulting」を立ち上げています。
GBPサポートの進化
- GBPサポートは2023年には300万件を超える問い合わせに対応、高品質かつ大規模なサポートを展開すべく進化してきた。
- 戦略としてはユーザーが自分で解決できる問題(教育ベース)には情報を提供し、解決できない問題(トラブルシューティングベース)は担当者につなぐという考え方。
- (教育ベース)の問題で問題が解決しない際は、サポートのメールに返信することで有人サポートが得られ、統合など(解決出来ない問題)の際は、Eメール、電話、チャットなどが出現。
- サポートが回答出来ない「No.1になるには?」といった質問の場合、ヘルプセンターのドキュメントを返信不可のメールで送信する。
- この構造化されたフローは2020年初期頃にスタートしており、(教育ベース)と(トラブルシューティングベース)の割合は70:30くらいになっていた感覚。
- AIを改善して、より多くのケースを自動化していくことがチームの目標。
- このフローはコロナ禍にリモートワークの必然性が出てきたことでバックログが発生し、サポート体制の見直しの必要性が出てきたことによるもの。以前は世界中のコールセンター(インド、ブラジル、アルゼンチン、ポーランド、マレーシア、日本など)で対応していた。
サポートで多い問題点と停止アルゴリズム
- サポートにおける主要な問題点は停止からの復活、オーナー確認、口コミに関する問題。
- ビジネスプロフィールを停止させる判断を行うアルゴリズムの変更で、過去に停止が急増したことがある。
- このアルゴリズムを調整することで不正なビジネスプロフィールを排除しようとしているが、緩めれば排除は出来ないし、強めれば善良なビジネスプロフィールが停止になってしまう。健全な中庸を取ろうと努力をしている。
- 信頼スコアの高いアカウントからの報告はより重要視される。(プロダクトエキスパート、ローカルガイドなど)
- 実際にビジネスの場所にいるという地理的シグナルは、報告の信頼性を高める。
- 誤検出の割合は全体の5〜10%ほどだが、全体の数が1億前後で、その10%でも1,000万件のビジネスとなるので、依然として誤検出の問題は大きい。
動画によるオーナー確認
- 動画によるオーナー確認は、はがきによるオーナー確認からの脱却が目的だった。
- 動画によるオーナー確認は、ビジネスの存在とオーナーの所有権を確認するための迅速な方法である。
- 動画によるオーナー確認は、AIと人間がその認証プロセスに関与している。
- ビジネスライセンスなどの文書も、信頼性を示す証拠となる。
信頼スコア
- ビジネスオーナーがビジネスのオーナー確認をすると、信頼スコアが向上する。
- GBPの信頼スコアは、編集履歴や認証の成功、不正な行為によって変動する。
- 疑わしい行為を行うと信頼スコアは低下する(ビジネスの所在地を移動し、それが差し戻されたりする など)
虚偽のクチコミへの対策
- 虚偽のクチコミは常に存在する問題であり、Googleは検知と削除に継続的に投資している。
- Googleのアルゴリズムは、クチコミを残したアカウントの年齢、アクティビティ、地理的位置、過去のクチコミ数、クチコミを投稿したビジネスのカテゴリー、多くの要素を考慮して信頼性を判断する。
- 例えば、アカウントが作成されたばかりで、すぐにネガティブなクチコミを複数投稿した場合、不正なクチコミと判断されやすい。
- 旅行先のレストランでの体験を帰国先で投稿したとしても不自然ではない。クチコミが他の場所から投稿されたとして虚偽のクチコミと断定されるわけではなく、他の様々な要素と組み合わせて判断される。
- Googleは人種差別的、障がい者差別的な内容を含むクチコミの削除にも取り組んでいるが、これらの表現を含むクチコミは、人間の目で確認する必要があるため、削除が困難な場合がある。
クチコミへの返信とランキングへの影響
- クチコミに返信することは、Googleのランキングを向上させる効果がある可能性がある。(※直接的にそうというよりは、ユーザーエンゲージメントを高めることによる間接的な効果であると考えられます。前後の文脈を把握して正しく理解する必要があります。)
- GMB api.comの調査によると、クチコミに返信する割合が10%増えるごとに、インプレッションが3%増加するとされる。
- ユーザーが批判的なクチコミを残した場合、ビジネスは返信をすることが重要。
- AIによるクチコミ返信は増加傾向にあるが、GoogleはAIが生成したコンテンツを直接的にペナルティの対象にするのではなく、ユニークなコンテンツを重視する。これは通常のSEOにおける考え方と同じ。
- Googleは、コンテンツがAIによって生成されたか、人間によって書かれたかをある程度識別出来る。
- AIを返信に使用する場合は、ビジネスの個性を反映するようにAIを学習することが重要。
- 2025年が進むにつれ、AIによる画一的なクチコミ返信は価値が無くなる可能性がある。ペナルティー対象にはならないだろうが評価は得られない。
クチコミへのフィルタリングとビジネスカテゴリー
- 特定のカテゴリー(鍵屋、引越し業者、配管業者など)のビジネスは、虚偽のクチコミが多いため、Googleのアルゴリズムによってより、レストランなどと比較して厳格にフィルタリングされている。
- 新しくできたビジネスは、短期間に大量のクチコミを得ることが難しいと見える場合がある。これはビジネスの年齢、規模とクチコミが投稿される速度のバランスが、Googleのアルゴリズムが信頼性を判断する上で重要な情報のため。
- Googleのアルゴリズムは非常に複雑であり、様々な要素を考慮してクチコミの信頼性を判断する。そのため、特定のクチコミが削除された理由を正確に予測することは難しい。
- Googleがビジネス、クチコミを書いたユーザーに関しての情報を持っているほどに、クチコミの信頼性が高まる。
- クチコミは、ビジネスではなくクチコミを書いたユーザーに属しており、それがビジネスに表示されている構造。そのためクチコミの信頼性の判断の比重はユーザーにより重きを置いている。
クチコミ関するその他の重要な点
- クチコミを購入することは絶対に避けるべきである。Googleはますます洗練された方法で偽のクチコミを検出しており、違反したビジネスにペナルティを科す可能性がある。
- クチコミを積極的に集めることは、ビジネスの成功に不可欠である。
- ゲーティング(肯定的なフィードバックをクチコミサイトに誘導し、否定的なフィードバックを内部処理すること)はGoogleのポリシーに違反する。
GBPサポートの文化と品質
- Googleはビジネスに対してそのポリシーや、何がOKで何がNGかの教育が十分に出来ているとは言いがたい。
- Googleは意図的に情報公開を制限している側面もある。これは、悪質なユーザー、スパマーが、Googleが提供する情報を悪用してシステムを回避することを防ぐ意図がある。
- サポートチームは効率性を重視しているため、個々のケースに深く関与するのではなく、全体的な問題を解決すること、全体によりインパクトを与える方法での解決に焦点を当てている。
- Googleはサポートエージェントに1日あたり12−15件のケースを解決することを求めており、結局スケールゲームになってしまっている側面はある。
- サポートへの問い合わせが増加している一方で、サポート担当者に繋がるのが難しく、返信不可のメールを得ることが多くなってきている。
- 内部的にはGBPへの投資は少なくなっている。品質の維持はされていくだろうが、サポートのレベル向上などは優先度が低いと思われる。
AIによる概要とGoogleが何を評価するか
- AIによる概要(AI Overviews)に載る方法、載らない方法をコントロールすることは出来ず、出力される情報を変更する方法はない。これはAIによる概要(AI Overviews)はデータベースではなく、多くの情報ソースから生成される情報であるため。
- AIによる概要(AI Overviews)はGBP、ウェブサイト、SNSなどあらゆる情報を情報ソースとしている。
- 今後はGBPの最適化に加えて、ウェブサイトやソーシャルメディアでの活動も重視する必要があり、これがブランド力の向上に寄与する。
- ブランド力の向上にはクチコミが重要だが、クチコミはGBPだけでなく、ウェブサイトなどの他の場所のクチコミも重要。
- 写真は非常に重要で一度撮影して大量に投入するのではなく、毎週写真を投稿するなどがエンゲージメントにつながり、高品質のデータを提供し続けている事の証明になり、検索時における信頼性と関連性が向上する。
- GBPに投資することは、ローカルパックのランキング評価において評価されるし、ウェブサイトやウェブサイトのコンテンツ、SNSに投資することはオーガニック検索における評価に繋がる。