Googleマップのクチコミに関するポリシー違反といえば、満足度の高いお客様だけをGoogleのクチコミ投稿に誘導する「レビューゲーティング」がよく話題になります。ただ、Googleのポリシーが禁じているクチコミ集めの手口はゲーティングだけではありません。特典や無償提供などのインセンティブと引き換えに書いてもらうクチコミや、利害関係のある人が書くクチコミも、「評価の操作」としてポリシー違反になります。

先日、飲食店向けにインフルエンサーを手配している集客支援会社のサービスについて情報提供をいただきました。そこで同社のマーケティング手法とその導入店を詳しく調査したところ、Instagramのタイアップ投稿が、Googleマップでは同じ文章のまま、PR表記のない★5クチコミとして載っている事例が見つかりました。投稿者はローカルガイドのレベルも高く、一般の利用者からは信頼できるベテランのクチコミにしか見えません。しかし実態は、広告であることを隠したPR案件が「お客様の声」として並んでいる状態です。これはGoogleが禁じる「評価の操作」に当たり、ステルスマーケティングの疑いも強いものです。
この記事では、今回の調査で確認できた事実をもとに、こうしたサービスの何が問題なのかを、Googleのポリシーとステマ規制の両面から明らかにします。あわせて、提案を受けた店舗が確認すべき点も整理します。
確認できたこと:Instagramの「PR」がGoogleでは消えていた
情報提供があったのは、飲食店向けにインフルエンサーのキャスティングとクチコミ獲得ツールを提供している国内の集客支援会社です。同社のサイトには、登録インフルエンサーの紹介ページがあり、発信先としてInstagramやTikTokと並んでGoogleマップの投稿者ページへのリンクが掲載されていました。
そこで、紹介されているインフルエンサーのGoogleマップの投稿と、同じ店舗についてのInstagram投稿を突き合わせてみたところ、下記のパターンが確認できました。
- InstagramではPR表記あり:投稿者名の下に「タイアップ投稿」の表示があり、投稿本文の末尾に「【PR】」や「#PR」が付いている。
- Googleでは表記なし:同じ人物が同じ店舗について書いたGoogleクチコミは★5。本文はInstagramの投稿と同じ文章で、Instagram側にある「【PR】」はGoogle側にはない。
- 投稿者はローカルガイドのレベル9:獲得ポイントは9万を超え、一般の利用者からは「信頼できるベテランの投稿」に見える。

別のインフルエンサーの事例では、ある店舗ではGoogleクチコミにもPR表記まで含めて記載があり、別の店舗ではGoogle側だけ表記が外れている例もありました。PR案件ならPRと表記するという意識はあるようですが、Googleのポリシーにおいては、PR表記があってもなくても「評価の操作」に該当します(詳しくは次の節で説明します)。
なお、この集客支援会社は自社の事例ページで、最初に紹介した店舗について「インフルエンサーと連携し、実際の来店体験を発信」したと紹介していました。しかし、PR表記がなければ、Googleマップでこのクチコミを読む利用者にはこれが広告だと知る手段がありません。事業者が関わった発信を、広告と分からない形で載せているという点で、ステルスマーケティングと同じ構図です。
Googleのポリシーでは「PR表記があっても」アウト
まず押さえておきたいのは、Googleマップのクチコミのポリシーにおいては、PR表記の有無が問題の本質ではない、という点です。
Googleマップのコンテンツポリシーは「評価の操作」として、次のようなコンテンツを禁止し、削除対象としています。
- 企業が提供するインセンティブ(金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなど)が誘因となって投稿されているコンテンツ
- 利益相反に基づくコンテンツ(現在または過去の契約関係など)
(出典:禁止または制限されているコンテンツ – マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー)
今回の事例のように、インフルエンサーが招待や無償提供を受けて来店し、その体験をクチコミにした場合は、PRと書いてあっても書いていなくても、このポリシーに抵触します。インフルエンサー界隈では、ステマ規制への対応として「PRと書けば問題ない」という感覚があるようですが、Googleのポリシーはもう一段踏み込んでおり、PRと明記していても、招待や無償提供を受けて書いたクチコミそのものを認めていません。
ステマ規制の面では「表記を外したこと」が問題になり得る
一方、日本の景品表示法では、2023年10月1日から、広告であることが分からない表示(いわゆるステマ)が不当表示として規制されています。規制の対象になるのは、投稿したインフルエンサーではなく、広告主である事業者(今回であれば店舗)です。
ステマに当たるかどうかは、大きく次の2点で判断されます。
- 事業者が表示内容の決定に関与しているか
- 一般消費者から見て、事業者の表示(広告)だと判別しにくいか
なお、無償で商品を提供しただけで、受け取った人が自主的に内容を決めて投稿した場合は、事業者の表示には当たらないという考え方も示されています。ただし、今回の例はこれに当てはまりません。
インフルエンサー本人がInstagramでPR案件だと表示しているうえ、集客支援会社も事例ページで「インフルエンサーと連携」した発信だと紹介しており、自主的な投稿とは言いにくい状況です。そして、そのPR投稿と同じ本文が、GoogleマップではPR表記なしの「一般のクチコミ」として載っているため、ステマ規制の観点からも問題になり得ます。なお、最終的な判断は消費者庁が行います。

店舗側がすべてリスクを負う
集客支援会社から「インフルエンサーに来店してもらい、SNSとGoogleマップの両方で発信します」と提案を受けることがあるかもしれません。一見すると魅力的な施策で、短期的には集客の効果が出ることもあるでしょう。しかし、その代償は小さくありません。この施策が原因でGoogleからクチコミの削除やビジネスプロフィールの制限を受けるのも、ステマ規制で消費者庁から措置命令を受けるのも、集客支援会社やインフルエンサーではなく店舗です。集客支援会社は、自らはリスクを負わないまま、施策の成果だけをアピールできる構造になっています。
Googleのポリシー違反による制限・停止
Googleは、虚偽のエンゲージメントに関するポリシーに違反した事業者には、違反したクチコミの削除に加えて、ビジネスプロフィールに次のような制限をかけることがあるとしています。
- 一定期間、新しいクチコミや評価を受け取れなくなる
- 一定期間、既存のクチコミや評価が非公開になる
- 虚偽のクチコミが削除されたことを利用者に知らせる警告が表示される
(出典:ポリシー違反によるビジネス プロフィールの制限 – Google ビジネス プロフィール ヘルプ)
この警告は「消費者アラート」と呼ばれ、プロフィールに「不審な高評価のクチコミが、この場所から最近削除されました」といった文言で表示されます。

筆者が確認した都内の飲食店では、約10,000件以上あったクチコミが、数件を残して削除されました。あわせてこの警告が表示され、新しいクチコミも投稿できない状態になり、その後はクチコミ欄そのものが表示されなくなりました。
この店舗が制限を受けた理由は外からは分かりませんが、長年積み上げたクチコミが、一度の違反判定でここまで失われ得るということです。また、Googleは制限の内容を「これらに限定されない」としており、違反が重なればビジネスプロフィール自体の停止に至るおそれもあります。
景品表示法違反によるリスクも
消費者庁には、一般の消費者も含めて誰でもステマの疑いを情報提供できる専用のフォームがあります(景品表示法に関する情報提供・相談の受付窓口)。こうした情報提供などからステマ規制に違反している疑いがあると、消費者庁や都道府県が広告主である店舗を調査します。違反の程度によっては行政指導で済むこともありますが、違反と判断されれば措置命令を受けます。
措置命令は事業者名とともに消費者庁のお知らせに公表され、ここ数年は消費者庁もX等での発信を強化しているため、「ステマをした店」として報じられる信用面の打撃も小さくありません。なお、措置命令に従わない場合は、刑事罰の対象にもなります。

ちなみに2024年11月には、大正製薬が、報酬を払ってインフルエンサーに投稿してもらったSNSの内容を自社サイトに転載する際に「PR」表記をしなかったとして、措置命令を受けています。PR案件の投稿を、表記を外して別の場所に載せたという点で、今回の事例と似た構図と言えるでしょう。
こうしたサービスから店舗を守るために確認すること
リスクを負うのが店舗である以上、身を守れるのも店舗自身です。インフルエンサー施策やクチコミ獲得ツールの提案を受けたら、契約の前に次の点を確認してください。
- Googleマップへの投稿が含まれていたら内容を細かく確認する:招待や無償提供などのインセンティブを受けて来店した方のクチコミは、PR表記の有無にかかわらず、Googleが禁止する「評価の操作」に当たり、削除の対象になります。提案書や契約書に、インセンティブを付与したインフルエンサーによる「Googleマップへのクチコミ投稿」が含まれている場合、その集客支援会社はGoogleのガイドラインや景品表示法を十分に理解していない可能性が高いと言えます。その項目だけを外せば済む話ではないため、契約そのものを見直しましょう。
- SNS投稿のPR表記は必ず付けてもらう:インフルエンサーが表記を付け忘れたり、同じ内容をほかのSNSや店舗のサイトなどに転載する際に表記を外したりした場合でも、ステマ規制で責任を問われるのは広告主である店舗です。投稿する場所ごとに「PR」「広告」「プロモーション」など広告だと分かる表記を付けること、表記を外して転載しないことを依頼の条件に入れ、公開された投稿も店舗で確認したほうが良いでしょう。また、表記は付けるだけでなく、ひと目で分かる位置と書き方にすることも大切です。大量のハッシュタグの中に「#PR」を埋もれさせたり、見えにくい末尾に小さく書いたりする方法は、広告だと分かりにくい表示として、ステマ規制の対象になり得ることが消費者庁の運用基準に示されています。
- クチコミ獲得ツールの機能を確認する:今回のケースに限らず、集客支援会社やビジネスプロフィールの管理代行会社の中には、Googleのガイドラインを理解しないままクチコミ獲得ツールを提供しているところもあります。たとえば「アンケートに答えるとAIがクチコミ文を作成する」「アンケートの回答で振り分けて、高評価のお客様だけにクチコミ投稿を促す」といった機能です。
AIがクチコミ文を作る機能は、それだけで違反と決まるものではありません。GoogleのポリシーにはAI生成によるクチコミの是非を直接定めた規定がなく、問題になるかどうかは仕組みの中身次第です。ただ、前向きな選択肢しかないアンケートから文章を作ったり、店舗が指定した商品名やキーワードを文章に入れたりすれば、店舗がクチコミの内容に関わることになり、Googleが禁じる「特定のコンテンツを含めるよう依頼する」行為と同じ働きをします。そもそも、AIが書いた文章をお客様に投稿させただけで「ユーザーのクチコミ」とみなすのは、解釈に無理があるでしょう。AIクチコミ生成ツールの問題点は、AIクチコミ生成ツールで“特定のコンテンツ”がクチコミに含まれると、Googleのガイドライン違反になるのか?や「AIでGoogleクチコミ量産」は本当に正解?リスクと落とし穴を徹底解説で詳しく解説しています。
一方、アンケートの回答で振り分けて、高評価のお客様だけにクチコミ投稿を促す機能は、はっきりとポリシー違反です。お客様にクチコミをお願いすること自体は認められていますが、高評価のクチコミだけを促す仕組みは、Googleが禁じる「肯定的なクチコミを選択的に募ったりする行為」に該当します。満足したお客様だけをGoogleの投稿画面に案内し、不満のあるお客様を別の窓口に振り分ける形(いわゆるレビューゲーティング)も同様です。
巷にはさまざまなクチコミ獲得ツールがありますが、提供する会社がガイドラインを理解しているとは限りません。今回の事例のように法律面のリスクまで店舗に説明されていないケースもあり、そうしたツールやサービスを導入した結果、被害を受けるのは店舗です。
インフルエンサーマーケティングも、手法そのものが悪いわけではありません。SNSでPR表記を付けて行えば、認知を広げる正当な手段です。しかし、そのPR投稿をGoogleマップにもクチコミとして投稿させた時点で、PR表記の有無にかかわらずGoogleのポリシー違反になります。
Googleと消費者庁への報告
今回確認した事例のうち、InstagramとGoogleの本文の一致が明らかだった1件については、悪質性が高いためビジネスプロフィールのプロダクトエキスパートとしてGoogleへ報告を行っています。加えて、Googleビジネスプロフィールのサードパーティ報告フォームから、集客支援会社をサードパーティのポリシー違反としても報告しています。
なお、景品表示法の観点からは、消費者庁のステマ専用の情報提供フォームから情報提供する予定です。消費者庁は情報提供後の調査の経過や結果を提供者に知らせていないため、こちらは措置が公表された場合、追記したいと思っています。
まとめ
- Instagramのタイアップ投稿が、Googleマップには同じ本文のままPR表記だけ外した★5クチコミとして載っている実例を確認しました。利用者には、それが広告だと見分ける手段がなくステルスマーケティングの恐れがあります。
- Googleマップでは、招待・無償提供などインセンティブの提供による投稿はPR表記があっても「評価の操作」としてポリシー違反です。
- 景品表示法のステマ規制では、広告であることが分からない表示の責任は広告主である店舗にあります。
- インフルエンサー施策を導入する際は、Googleマップへのクチコミ投稿が契約内容に含まれていないかを確認し、含まれていれば契約そのものを見直しましょう。
- 確認した事例はGoogleに報告済みで、消費者庁への情報提供も予定しています。
PR案件の投稿を、PR表記を外してGoogleマップの一般のクチコミとして載せるサービスは、クチコミを頼りにお店を選ぶ利用者を欺くものです。しかも、Googleからの制限もステマ規制の責任も、集客支援会社ではなく、費用を払って依頼した店舗が負うことになります。集客の成果をうたいながら、そのリスクをすべて店舗に負わせるサービスは、「ガイドラインを知らなかった」では済まされず、極めて悪質と言わざるを得ません。似た提案を受けている店舗の方は、契約を急がず、その中身を確かめてください。
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