“ベビーカーで入れるお店”も簡単に見つかる時代へ:AIモードのローカル検索を検証してみた

前回、AIモードが英語版で使えるようになった際に、英語版を使った考察記事を書きました。その後9月9日にGoogleはAIモードの日本語での提供を開始しました。英語版の時は英語環境で日本のお店を検索しても、国内のグルメサイトやメディア等の情報を十分に読み込めていないような印象を受けましたが、日本語で正式実装されたということで、日本語でローカル検索をAIモードで行ったところいくつか新しい発見や気づきもありましたので、今回の記事で解説してみたいと思います。

従来のローカル検索では諦めていた「複雑、具体的な検索」ができる

日本語版でAIモードを使ってみて強く感じたのは、従来のローカル検索をGoogle検索、Googleマップで行った際には諦めていた「複雑な条件」「具体的な条件」での検索にもしっかり追随してくれるという点です。

例えば「ベビーカーに子供を乗せて出かけ、家族でランチを食べられるレストランを探す」シーンを想定してください。

Google検索、Googleマップでお店を探す場合

Google検索、Googleマップでは長いフレーズをそのまま入力しても適切な結果が得られませんので、ローカルパックが表示されやすい「吉祥寺 レストラン ベビーカー」のような形で検索を行う必要があります。

クチコミ内に探している内容があったパターン(Google検索より引用)

ローカルパックで表示された店舗の候補の中には、「ベビーカー」という単語を含むクチコミがピックアップされて表示されていますが、「クチコミに具体的な体験が記載されている以上は間違いないのだろう」と思いつつも、検索するキーワードによってはローカルパックにピックアップされたクチコミが出てこないケースもあり、表示された候補に対してユーザー自ら、探している情報が掲載されているか深堀りして調べていく必要が一定あります。

AIモードでお店を探す場合

AIモードの場合、さらに複雑で具体的な検索を行っても追随してくれますので、もう少し検索意図に近しい「吉祥寺でベビーカーで入店できるレストラン」という検索を行って結果を得ることができます。

店舗の詳細情報として「スタッフがベビーカーの移動を手伝ってくれる」など、「ベビーカーで入店できる」など、どのように対応してくれるのか?といった答えが検索結果内に表示されているため、店舗選びの際に参考にしやすいと言えます。

また、検索結果によっては店舗の説明文内に🔗アイコンが表示されており、クリックすると検索結果右側の参照内容が絞り込まれるような挙動を示します。

AIモードの検索結果で1番目に表示された「マザーズ 吉祥寺店」に関しては「ベビーカーでの入店: 可能です。階段がありますが、スタッフが運んでくれます。」とAIモードが回答しており、該当する内容はGoogleビジネスプロフィールに記載されたクチコミの中から確認ができました。

店探しと共に消費行動のプランニングができる

個人的に従来のローカル検索よりもAIモードがはるかに便利で柔軟性が高いと感じるのは、出かける際のプランニングまで、ある程度任せられるところです。明確に予定を立てて行きたいところを決めている場合ではなく、漠然と「こういうことをしたい」と考えている時に、選択肢を提示してくれるので、非常に利便性が高いと感じます。

後述しますが、AIモードがリコメンドしてきたプランについて一般的すぎると感じる場合は、「知る人ぞ知るスポットを教えて」と伝えると、ちゃんとそれっぽい結果を返してくれます。

例として1️⃣品川で、2️⃣映画を見て、3️⃣夕食にラーメンを食べ、4️⃣カフェで映画を振り返りたい という条件をすべて検索クエリに含めても、AIモードは1️⃣品川の映画館、2️⃣見るべき話題作、3️⃣オススメのラーメン店、4️⃣落ち着いたカフェ をすべて提案してくれ、さらにはモデルプランを提案してくれます。

観光プランの立案に使える

AIモードは店探しと消費行動のプランニングが得意ということがわかりましたので、もしやと思い使ってみたところ、AIモードは観光プランの立案に実際に使えると感じます。

例として「10/1から1週間いわき市で観光をしたい。家族4人で子供は2人。オススメの観光スポットと食べるべきグルメ、行くべき景勝地などを知りたい。」と検索してみました。

いわき市は実際に仕事でも何度も訪れ、各施設の視察等もさせていただいていますが、AIモードが提案してきた観光スポット、食べるべきグルメ、行くべき景勝地は、どれも納得できるものです。

提案されたスポットに対してさらに会話を続けていくことができるのがAIモードの強みです。しかも今までの会話内容は履歴として残った状態で会話を続けることができますので、「いや、ちょっとそれ違う」という時には追加の指示を加えることで、より知りたい検索結果を得ることができます。このあたりはまさにAIが検索と融合しているからこそ可能な機能ですね。

ドライブルートの提案にも使える

観光スポットの提案以外の使い方としては、ドライブルートの提案等にも便利そうです。あえて土地勘がある伊豆に東京から行く際のドライブルートを提案してもらい、自分の脳内データベースと答え合わせをしてみましたが、確かにAIモードが提案するルートは納得感があります。

個人的には大観山以降は伊豆スカイラインで伊豆高原に抜けるルートのほうがワイディングを存分に満喫できるのでオススメなのですが、海を眺めながらのドライブと考えると、確かにビーチラインも納得です。

また、これ以外の使い方としてはシチュエーションや時間、行きたいジャンルなどをある程度絞り込んだ上で、デートプランの立案等にも便利そうだと感じました。

AIモードの情報源(ソース)の幅は広い

AIモードの日本語版が使えるようになったので飲食店の検索を複数パターンで行いましたが、その中で様々な情報源(ソース)が確認できました。国内グルメサイトはもちろん、ニュースサイト、OTAサイト、メディア、マップサービス、海外のアクティビティサイト(KKday)、各種SNS(Instagram、Facebook、X)、公式ウェブサイト、Googleビジネスプロフィールも参照されています。

グルメサイト、公式ウェブサイトは様々なページを参照

グルメサイトの場合はまとめ記事、店舗ページ、検索結果ページ、ユーザークチコミが参照されるなど複数のページが情報源として参照されています。公式ウェブサイトにしてもトップページの他に、ホームページ内の公式ブログ記事も情報源となるケースが多く確認できました。また、SNSの場合は公式アカウントトップ、公式からの投稿、ユーザー投稿が参照されるケースもありました。

情報源の情報の新しさはそこまで重要ではなさそう

傾向として情報源に関わらず、必ずしも2025年9月現在の最新情報が参照されているというわけではなく、ある程度時間が経過したメディア上の情報、SNS投稿であっても情報源として参照されているようです。

SNSの動画投稿も情報として拾われる

SNSの中で「おっ!」と思ったのは公式のInstagram投稿。しかもAIモードの検索窓に入力した「吉祥寺でベビーカーで入店できるレストラン」 は投稿本文中になく、動画内テキストで「ベビーカーのまま入店できる」と言及があるものを拾えていたことには驚きました。

SNSで投稿している情報はローカル検索結果において、今まではソーシャルメディアの最新情報くらいでしか取り上げられないことが多い印象でしたが、AIモードにおいてはばっちり情報源(ソース)として参照されています。公式SNSでコツコツと店舗の魅力、特徴を投稿してきたお店にとってはこれは大きな追い風になると言えるでしょう。

クエリによってはチェーン店より特色ある個店のほうが表示されやすい

AIモードの情報源を飲食店のケースで上記にまとめてみましたが、例えばカフェ、鰻屋、焼き鳥、雑貨などチェーン店以外のお店もかなりの母数があるケース、より狭いジャンルのお店に関しては個店のほうが検索結果として優遇される印象がありますが、居酒屋、焼き肉、ラーメン店、ホームセンター、ファミリーレストランなど、個店よりチェーン店のほうが一般的には多い場合はチェーン店のほうが検索結果として表示されやすい傾向がありそうです。

AIモードの検索結果の情報源はかなり幅が広いですが、ビジネスプロフィール自体よりは大小様々なメディア、グルメサイト、公式サイト、SNSなどの情報をより参照している傾向を感じます。

特にメディア、グルメサイトの影響力は大きいように感じますが、タウンメディア、おでかけガイド、観光ガイド等のメディアサイトには地域の人気店、特色があるお店が取り上げられがちで、チェーン店はあまり取り上げられないことを考えると、チェーン店よりは特色ある地域の個店のほうが検索結果上で優遇される傾向は、ある意味AIモードのローカル検索においては必然と言えるかもしれません。

とは言え、この傾向は検索するエリアに存在する店舗の数によっても変化しますので、「伊豆のJR下田駅付近でおしゃれカフェを探して」と聞いた時と、「JR新宿駅東口付近でおしゃれカフェを探して」と検索した時では、前者は個店が多く、後者はチェーン店もある程度検索結果に含まれているというケースはあります。

9月29日からの検索でパーソナライズドが強化された印象を受ける

この記事は執筆開始から忙しくなってしまい、結構時間をかけて書いている記事なのですが、9月22日週と比較すると9月29日現在のAIモードの検索結果はよりパーソナライズドされた印象を受けます。実際に検索結果はパーソナライズドされていると表記されており、確かに過去の検索履歴が考慮されています。

例として飲食店を検索してみましたが、新規で検索しているにも関わらず、以前飲食店を検索する際に条件指定していた「子連れ」という内容、どの時点のパーソナライズドなのか不明ですが、「スパイシー」なども考慮されて検索結果が表示されています。

しかし過去にAIモードでは検索したことがないホームセンターなどを検索すると、特にパーソナライズドされた検索結果にはならないようです。

今後はパーソナライズドによって、個人の検索履歴、嗜好が検索結果に反映されるようになっていくようなので、個人個人の検索結果は人によって大きく変わっていく可能性もありそうですね。

店舗オーナーは今後AIモードにどう向き合うべき?

英語環境と日本語環境での検証の結果、AIモードでローカル検索を行った際には、ビジネスプロフィールだけではなく、公式ウェブサイト、ニュースサイト、OTAサイト、外部メディア、マップサービス、各種SNSなども情報源として参照されており、多くの情報が引用されることがわかりました。

その中で「これをやっておけば大丈夫」「こうしないと表示されにくい」ということは言いにくいですが、情報発信の方法においていくつか考えておいたほうがいいことはあります。

情報の掲載面を増やす

AIモードがどこに書かれている情報を参照してくるかはわかりません。そのため、店舗の基本情報やサービス、こだわり、実際の体験等を含めて、ビジネスプロフィールだけではなく、公式ウェブサイト、ニュースサイト、OTAサイト、外部メディア、マップサービス、各種SNSに情報を掲載しておくことが重要です。

ユーザー目線での情報発信を意識する

AIモードは通常の検索におけるローカル検索よりも、より複雑で具体的な検索が得意です。ということは、ローカル検索では拾われなかった、店舗の細やかな対応やこだわり、ユーザーの具体的な体験談を拾ってくれる可能性があります。

そのためにも情報の掲載面を増やしつつ、店舗発信においては、公式ウェブサイトを含めた様々な媒体で店舗の細やかな対応やこだわりを発信しつつ、ユーザーには具体的な体験をクチコミとして残してもらうこと、メディア等に取り上げてもらう機会があれば、より具体的な情報を掲載してもらうことを意識したようが良いでしょう。

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株式会社mov所属/観光庁DMO外部専門人材(Google Maps活用での誘客、周遊促進サポート)/Googleビジネスプロフィール ゴールドプロダクトエキスパート/観光地である伊豆出身なこともあり、観光地の消費額増大、地域活性化に貢献したいと思っています。/Googleビジネスプロフィール ヘルプコミュニティ(https://support.google.com/business/community?hl=ja)にてボランティアで回答中。

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