さて、表題のとおりですが、Google検索、Googleマップにおいて待望の、「インセンティブや強要でクチコミを集めているお店」を通報することが出来るフォームが公開されました。

その名も「事業活動を報告する」となっており、英語で見ても「Report business conduct」という、ややぶっきらぼうな名称となっています。

なぜ待望か?というと、実は今までクチコミ集めにおいて不正を行っているお店を通報するフォームは存在しなかったためです

今までに存在する仕組みとして、店名等のビジネス情報がGoogleのガイドラインにそぐわない場合に利用出来る「ビジネス情報の改善フォーム」がありますが、この改善フォームは「ビジネス名」「住所」「ウェブサイト」等の報告は出来ても、それ以外の報告には使えないものとなっています。その旨はこの改善フォーム内にも下記のように明記されています。

ビジネスの名前、電話番号、URL に関連する不正行為についてのものではない申し立ては、審査の対象にはなりません。

「事業活動を報告する」の使い方

今までの経緯等はご紹介したとおりですが、実際に「事業活動を報告する」を使ってみましょう。実は、以前訪問したことがある飲食店でインセンティブを提供してクチコミを集めている現場を目にしており、証拠として写真を撮影してあったので、今回報告をしてみました。

報告する場所のマップの URL を追加(必須項目)

まずはGoogleに対して報告するお店のマップURLを知らせる必要があります。

メールアドレス(必須項目)

続いて報告を行うあなた自身のメールアドレスを入力します。※自動入力されています。

報告する懸念事項(必須項目)

報告する事項は次のうちいずれかである必要があります。

  • 「レビューの見返りとしてなんらかのインセンティブを提供している」
  • 「レビューの投稿を強要している」

なお、これらの事項は「マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー」に記載のある「虚偽のエンゲージメント」に該当します。

具体的に該当する行為もフォーム内に明記されています。

  • レビューの投稿や否定的なレビューの修正または削除と引き換えに、インセンティブ(金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなど)を提供する行為
  • 否定的なレビューの投稿を妨げたり禁止したりする行為や、肯定的なレビューを顧客から募る行為

懸念事項が発生した場所(必須項目)

続いてこれらの行為が発生した場所を下記から複数選択することが可能です。

  • ソーシャル メディア(Facebook、Instagram、X、LinkedIn など)
  • 店舗(対面でのやり取り、ポスター、QR コード、チラシなど)
  • アプリ、メール、SMS でのプライベート メッセージ
  • ビジネスのウェブサイト、または別のアプリやサイト
  • クチコミ
  • その他(以下に具体的な内容をご記入ください)

証拠写真の提出(必須項目)

続いて証拠として実際に店頭などでインセンティブを提供していることがわかるポスター、QRコード、クチコミを強要していることがわかる画像などを写真で提出します。なお、証拠として述べられているものは下記です。当然ながら証拠にならないもの、不鮮明である写真等は証拠になり得ません。

  1. レビューに対するインセンティブを提供しているポスター、チラシ、QR コード、または類似した資料
  2. インセンティブについて言及しているソーシャル メディアの投稿、ウェブサイト、その他のオンライン プラットフォーム
  3. インセンティブについて言及しているメール、テキスト、その他のダイレクト メッセージ
  4. 評価やレビューを行うようビジネスが強要していることがわかる画像

その他の証拠を提供するための URL を追加(任意)

追加でその他の証拠書類をURLで追加することが可能ですが、これはおそらくスプレッドシートにまとめた証拠写真、もしくは証拠写真をGoogleドライブのフォルダに保存した場合のリンク等、オンライン上にアップした証拠写真などが該当すると思われます。なお、こういった形でGoogleにファイルを共有する際は、共有権限を「URLを知っている全員」等にしておいたほうが良いでしょう。

「事業活動を報告する」を使った後はどうなる?

「事業活動を報告する」を送信すると、英語で下記メッセージが表示されます。

内容としては「報告内容を確認し、該当のビジネスがGoogleのポリシーに違反しているかレビューを行います。このプロセスには時間がかかります。」と簡潔に書かれており、その後どういった形で何がどうなるのかは明記されていません。

なお、送信を行ったGメールアカウントにも特にメールは届いておらず、サードパーティーポリシー違反で報告を行った時のようなケースIDも発行されません。

当然ながらすべての報告が真実であるわけでもなく、勘違い等もあるでしょうから、その全てに対してGoogleが何らかの返答を行ったり、ケースIDを発行して、そのケースについてサポートに対して問い合わせが出来ないのも、納得といえば納得です。

とは言え、Googleに対してのフィードバック同様に、ある一定の数の報告が証拠付きで提供された場合、該当のビジネスに対しては「ポリシー違反によるビジネス プロフィールの制限」が行われると考えることが出来ます。

「ポリシー違反によるビジネス プロフィールの制限」自体は今年に公開された新しいヘルプで、

Google は、事業者に関する虚偽の、あるいは報酬に基づくクチコミと評価を重く受け止めています。虚偽のエンゲージメントに関するポリシーに違反している事業者は、プロフィールで違反行為が確認された場合、一定の制限を受けることがあります。

と記載があるように、Googleが「虚偽のエンゲージメント」全般を重く受け止めていることが明記されています。なお、上記のヘルプ内にビジネスが受ける可能性がある制限については3種類あると書かれています。

  • 一定期間、ビジネス プロフィールで新しいクチコミや評価を受け取ることができなくなる
  • 一定期間、ビジネス プロフィールの既存のクチコミや評価が非公開になる
  • 虚偽のクチコミが削除されたことを消費者に知らせる警告がビジネス プロフィールに表示される

一定期間クチコミや評価が受け取れない、クチコミや評価が非公開になることもそうですが、3番目の警告文の表示は英語圏では度々報告されています。日本でも過去に何回か目にした事がありますが、手元にスクリーンショットがないので、英語での表示を貼っておきます。

「事業活動を報告する」はどこから利用出来る?

「事業活動を報告する」は、ヘルプページ以外は現時点ではかなりわかりにくい場所にあります。

利用出来る場所はデバイスや利用環境によって異なりますが、基本的な流れはこうです。

  • 報告対象のお店を選択
  • 「情報の修正を提案」をクリック
  • 「休業、閉業、または削除」をクリック(※マップ環境のみ)
  • 「事業活動を報告」もしくは「ビジネス行為を報告」をクリック

パソコンから操作する場合

検索環境

  • 直接検索、もしくは間接検索からナレッジパネルを表示
  • 「情報の修正を提案」をクリック
  • 「事業活動を報告」

マップ環境

  • 直接検索、もしくは間接検索からナレッジパネルを表示
  • 「情報の修正を提案」をクリック
  • 「休業、閉業、または削除」をクリック
  • 「ビジネス行為を報告」

スマートフォンから操作する場合

検索ブラウザ環境

  • 直接検索、もしくは間接検索からナレッジパネルを表示
  • 「情報の修正を提案」をクリック
  • 「事業活動を報告」

Google Mapsアプリ環境

  • 直接検索、もしくは間接検索からナレッジパネルを表示
  • 「情報の修正を提案」をクリック
  • 「休業、閉業、または削除」をクリック
  • 「ビジネス行為を報告」

どの環境からも報告自体は可能ですが、マップ環境のみ「休業、閉業、または削除」の後に表示される形式ですので、ややわかりにくいと言えます。

なお、Googleあるあるですが、環境やデバイスによって言い回しが異なりますので(「事業活動を報告」もしくは「ビジネス行為を報告」)このあたりも本来的には統一して欲しいところです。

ゲーティングの報告には使えない?

今回の報告フォームで「インセンティブや強要でクチコミを集めているお店」を通報することが出来るようにはなったのですが、使っていて「あれ?」と思ったことがあります。

それは、「マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー」に記載のある「虚偽のエンゲージメント」内の「ゲーティング」行為の報告には使えないのでは?ということです。

なお「ゲーティング」は上記ヘルプでは下記のように説明されている行為です。

顧客からの否定的なクチコミの投稿を妨げたり禁止したり、肯定的なクチコミを選択的に募ったりする行為。

今回のフォームはあくまでも下記のような行為

  • 「レビューの見返りとしてなんらかのインセンティブを提供している」
  • 「レビューの投稿を強要している」

に対して利用出来るフォームとなりますので、「インセンティブ」を提供せず、「レビュー投稿を強要しない」が、何らかの方法で「顧客からの否定的なクチコミの投稿を妨げたり禁止したり、肯定的なクチコミを選択的に募ったりする行為。」を行っていても、フォームの趣旨とは異なると言えそうです。

「ゲーティング」もGoogleのヘルプ内では「虚偽のエンゲージメント」に該当する行為となりますので、このフォーム内からの報告が出来たほうが良いと私は思いますので、フォードバックを送信しておきました。

ガイドライン遵守がますます重要になる

日々、Googleビジネスプロフィールのヘルプコミュニティーで回答する中で、今回の「事業活動を報告する」フォーム登場以前の今年春くらいから、ガイドラインに対しての違反行為への取り締まりが一段と厳しくなった印象を受けています。

具体的には登録要件を満たさないビジネスの停止・無効のご相談の急増がありますが、今回のフォームのように、おそらくは「虚偽のエンゲージメント」を起因とする停止も増えている印象です。

また、停止・無効のご相談からエスカレーションをGoogleに対して行った際に、不正な形でクチコミを集めていることをGoogleが確証を持っていた場合、スパム行為を行ったということで、停止からの復活が認められないケースも増えています。

今回のフォームが登場したことで、Googleは一般のGoogleマップユーザー、ローカルガイド等の協力も得て、「虚偽のエンゲージメント」でクチコミを集めているビジネスの情報を広く集めることが出来るようになります。

具体的な業界名の言及は避けますが、どう考えても通常の方法でクチコミを集めていないであろうビジネスが集中する業界がありますが、こういった業界関係者は、このフォームの登場で戦々恐々としているかもしれません。

Googleビジネスプロフィールという事業者にとって非常に便利で素晴らしい無料のマーケティングツールを使う以上、事業者はしっかりとガイドラインを遵守して有効活用してもらいたいですね。

投稿者 moto-local

株式会社mov所属/観光庁DMO外部専門人材(Google Maps活用での誘客、周遊促進サポート)/Googleビジネスプロフィール ゴールドプロダクトエキスパート/観光地である伊豆出身なこともあり、観光地の消費額増大、地域活性化に貢献したいと思っています。/Googleビジネスプロフィール ヘルプコミュニティ(https://support.google.com/business/community?hl=ja)にてボランティアで回答中。